このガイドの対象
日本語で原著論文、修士論文、博士論文、学会投稿原稿を書く研究者・大学院生、および英語の草稿を日本語の学術文章に整える執筆者向けです。分野固有の表記慣行と、指導教員・所属機関・投稿先の規程を優先して利用してください。
1.推敲前に、変更しない研究情報を固定する
最初に原稿の保存版を作り、研究目的、仮説、対象者数、測定条件、解析手法、数値、引用を確認します。専門用語、変数名、尺度名には表記一覧を用意し、「参加者」と「患者」、「関連」と「影響」などを読みやすさだけで入れ替えないようにします。とくに観察研究で「関連が認められた」を「効果があった」に変えると、文章の改善ではなく研究上の主張の変更になります。
推敲を依頼する範囲は、一つの節または論理的にまとまった段落を基本にします。指示には「である調を維持する」「引用番号、数値、単位、日付は変更しない」「新しい根拠や解釈を加えない」「曖昧な箇所は推測で補わず指摘する」と明記すると、修正候補を検討しやすくなります。前後の文章を省く場合も、略語の定義と研究デザインは必要な範囲で示してください。
Humanizelyは15言語に対応し、無料利用では1回のリクエストにつき500ワードまで扱えます。日本語の入力を一律に500文字と読み替えず、画面上の入力上限やカウントを確認してください。長い論文を分割した場合は、最後に用語と文体を全文で照合します。未公表データ、個人情報、共同研究先の秘密情報については、外部サービスへの入力が許可されているかを先に確かめ、必要に応じて匿名化または入力の見送りを判断します。
2.要旨・方法・結果・考察で、修正の基準を変える
要旨では、背景の説明を増やすより、目的・方法・主要結果・結論の対応を明確にします。「有用な知見が得られた」とまとめるだけでは、何が分かったか伝わりません。ただし、本文にない結果を追加したり、副次的な結果を主要結果のように見せたりしないことが前提です。投稿先の字数制限や構造化要旨の見出しにも合わせます。
方法では、読みやすさより再現に必要な情報の保持を優先します。募集期間、除外基準、装置、測定回数、解析対象の定義を削らず、実施順序に沿って文を分けます。「適切に処理した」「通常の方法を用いた」といった表現は、手順が不明なままでは改善できません。著者が実験記録や解析コードを確認して具体化する必要があります。
結果では、観測値と解釈を分離し、表や図と本文の数値を一致させます。有意差がないことを「同等である」と言い換えたり、割合の差と相対的な変化率を混同したりしないようにします。考察では「示した」「示唆する」「可能性がある」を根拠の強さに応じて選びます。過剰な断定を弱める場合も、すべてを曖昧にするのではなく、標本の範囲、測定上の制約、研究デザインによる限界を具体的に示します。
英語由来の「我々は〜を実施した」は、動作主が明らかなら「本研究では〜を実施した」と整理できます。一方、自分たちの分析と先行研究の説明が交互に出る段落では、主語を残した方が誤読を防げます。受動態や名詞表現を機械的に排除せず、何を文の中心に置くべきかで判断してください。
3.修正案を採用する前に、出典と著者責任を確認する
修正前後を並べ、まず意味の変化を確認し、その後に表現を評価します。否定の有無、比較対象、対象集団、因果関係、時間的な前後関係が保たれているかを一文ずつ照合してください。「一部の参加者」が「参加者」に変わるだけでも、適用範囲が広がってしまいます。本文、図表、要旨で同じ結果が異なる表現になっていないかも確認します。
引用は番号を残すだけでは不十分です。文を分割・結合すると、引用がどの主張を支えるかが変わる場合があります。引用元の本文に戻り、その資料が対象の主張を実際に支持しているかを確認してください。直接引用は原文を勝手に推敲せず、引用符やページ番号を含む投稿規程に従います。文献名、著者名、発行年、DOIを推測で追加することも避けます。
論文の問い、分析、解釈は著者自身の仕事でなければなりません。AIによる表現支援が認められる範囲と開示方法は、所属機関や投稿先によって異なります。禁止された利用を隠すために文章を変えず、必要な場合は利用サービス、利用目的、対象範囲、人による確認内容を記録・開示します。草稿、修正履歴、研究ノートを保存することは、文章の成立過程を説明する助けになりますが、規程違反を正当化するものではありません。最終稿は著者が検証し、共著者による確認も受けてください。